呪文を唱えた瞬間、俺と早和を丸い球体が包んだ。
この球体は水をはじき、酸素を送り込んでくれる。
これでもう水を飲まずに済む事になる訳だ。
ちらっと早和を見ると、咳をして飲みこんだ水をすべて吐いた様子。
とりあえずほっとして、それでもグッタリしている早和の様子に急がなければと思い直す。
「さて次は…」
俺はなるべく早く済ませようと思いながら正面の妖怪に向き直る。
…が、妖はひどく驚いた様子で俺を凝視している。
でも今はそんなの無視だ。
…さて。片付けますか。
早和に手を出した罪は重いんだよ。
『お、お前まさか…』
「なんだよ」
もう一度睨みをきかす。
『お前、陰陽師か!?』
俺はクスッと口端を上げて笑った。
そしてわざとゆっくりと言う。
「あれ?知らなかったか?俺の名前は陽碧 明っていうんだよ」
『っっ!?ひ、陽碧一族の後継!?やばい!消される!!』
妖怪は悲鳴を上げて逃げだす。…だが、
「逃がすかよ」

