私が、明のことで悩んでることに。


「早和ちゃんを見ればわかるよ…。すごく、切なそうな目。それに…私も、隼人のことで悩んだ時期があったから」


さくらちゃんが悲しそうな目をしたまま少し微笑む。


「早和ちゃん、選択を間違っちゃダメ。ちゃんと、深く考えて。じゃないと…守りたいって思って起こした行動でも、それが、逆にその人を傷つけてしまう事になるから…」


さくらちゃんが言っている意味は、全然わからない。

だけど…

さくらちゃんの言葉は、すごく重く私の心に響いた。


「さくら」

「ひゃっ!」


いつのまに近くに来ていたのか、鳴海さんがさくらちゃんの頭にデコピンをした。

私もさくらちゃんも、突然の鳴海さんの登場にビックリして彼を見上げる。


「は、隼人…?」


さくらちゃんが茫然とした声で呼ぶと、鳴海さんはさくらちゃんの耳元に顔を寄せて何かを呟いた。


「で、でも…」


それを聞いたさくらちゃんの顔が、また悲しそうな表情になる。

その表情を見た鳴海さんは、再び顔を寄せた。

その光景を見ていて…微かに聞こえてしまった、鳴海さんの声。


「「………っ!!////」」


その呟きを聞いて、さくらちゃんと2人で赤面してしまった。

だって、その言葉は…


『だったら。一生、俺のそばから離れるな。ずっとそばにいろよ…』


ほとんどプロポーズのような言葉。

というか…鳴海さんほどの人にそんなこと言われたら、世の女性はひとり残らず鳴海さんに惚れちゃうんじゃないの?

現に、さくらちゃんはこれ以上ないってほどに顔を真っ赤にして、鳴海さんを見上げている。


「…わかった?」


そう言って優しくさくらちゃんの頭を撫でる鳴海さん。


「………はい」


さくらちゃんは、恥ずかしそうに、でも嬉しくてたまらないような笑顔を見せて、応えた。






この時に、もっとちゃんとさくらちゃんの言っていた言葉の意味を考えていればよかった。

そうすれば、あんなことには…ならなかったのかもしれない。

ごめんね、明…。