「…ルカ君…って、もしかしたら…」
明が、何かを考えるような顔をする。
「明…ルカ君を知ってるの?」
「…たぶん。ちょっと、その名刺見てもいいか?」
そう言った明の顔が少し引きつっていたような気がしたのは…気のせい?
「それは構わないけど…。はい」
そう言って明に名刺を渡すと、一通り眺めた後、小さく「やっぱり…」と呟いた。
「…?」
「…あのな、早和」
頭の中が?でいっぱいになった私に、明がなんとも言えない複雑な顔で話しだす。
「この名刺の、fleur(フルール)っていう会社。ここは、フランスの…大手香水メーカーだよ」
「香水…?」
「そう。フランス国内でも、1,2を争うほどの大企業だ」
「…え?」
なんか、とんでもない話を聞いている気がするんですけど…。
フランス国内で、1,2を争うほどの大企業…?
「…で、このGilles Chabanon(ジル・シャバノン)という方は、ここにも書かれている通り、fleurのDGだ」
「…DGってなんですか…?」
…なんか、聞くのも恐ろしいような気がしてくる。
だけど聞いておかないといけない気がするし…。
「DGっていうのは、ディレクトゥー・ジェネラルの略。つまり代表執行役って事だ」
「だ、だいひょうしっこうやく…?」
「代表取締役とほぼ同じだって考えていいよ」
…ちょっと待って下さい。
代表取締役って、あの代表取締役ですよね…?
会社ですっごく偉い人ですよね…?
…私、そんなすごい方の名刺をいただいちゃったの…?
「ど、どうしよう…」
「どうしようって言ったってもうこの名刺は早和の物だし。こんなすごい方のご家族と知り合いになるって滅多にない…というかあり得ないくらいの確率だな。とりあえず、これも何かの縁だと思って有り難くいただいとけ」
そ、そんな簡単に言わないでよぉ…

