きゅっと俯いたまま目を閉じると、温かいものが頬に触れた。


「えっ…?」


そのまま、その温かいもの…明の手が、私の顔を上に向かせる。

促されるままに上を向くと、苦笑気味の明と目があった。


「やっぱり…泣いてる」

「な、泣いてないよ…?」


まだ涙は流れてないもん。

さっきと変わって、落ち着いた表情をしている明。


「ケガは…?」

「してないよ?」

「襲われたりとかは…?」

「それもないよ。大丈夫」

「…そっか。よかった」


私の言葉に、明は安心したような表情を見せてそう呟いた。


「………っ」

「ほら。泣いた」


明が笑って、私の目からこぼれおちた涙をぬぐってくれる。

だって。

明が優しいからだよ。

その包み込むような優しさに触れるたびに、胸の奥が熱くなって。

嬉しくて、なんだか…温かくて。

泣きそうになっちゃうの。

どうしてそんなに優しいの…?

その優しさに甘えてばかりじゃいけないってわかってるのに。

私だって、明の力になりたいのに。

いつも何かをもらっているのは私だけな気がするの。


「泣き虫早和ちゃん」

「…泣き虫じゃないもん」


こうやって軽口を言い合っているような関係。

それはとても心地よくて…。

でも、だけど。


私は、明のために

何をすればいい―――………?