その子達には、皆月の異名がついているの。
たとえば―――………今、私の目の前にいる如月は2月の別名だし。
「…早和様?」
「へっ?あ、あぁ…ごめんなさい」
ぼーっとしてて如月の話を聞いていなかった。
如月が薄く微笑して、もう一度話してくれる。
「明様が早和様をお探しになっています」
「わざわざ如月を使ってまで探すなんて…すごく心配かけちゃったんだ…」
「会場は広いですし、所々に雑鬼はいますし…。なにより、早和様はあまりこういう会に慣れていらっしゃらないようなので、何かあったのではと心配なようでしたわ」
「うん…。明に、謝らなくちゃ。パーティー会場に戻ろうか」
そう言った瞬間、如月がふと遠くを見るような目をして、微笑んだ。
「その必要はありませんわ」
「え…?どうして…」
「だって…
「早和っ!!」
何かを言いかけた如月をさえぎるようにして声が響いた後、ガサッと近くの木が揺れて、そこから明が顔を出した。
「あ、明!」
私の姿を見て一瞬ホッとした顔になった明に小走りで近づいた。
謝らなくちゃと思って口を開こうとしたんだけど…
「バカ早和!勝手にいなくなるな!!」
「う…ご、ごめんなさい…」
言葉を発する前にすごい剣幕で叱られてしまいました。
「気が付いたら隣にいないから…誘拐とか、もしかしたらまた襲われてるのかと思って心配したんだからな!!」
「うん…。何も言わずに離れちゃって…ごめんなさい…」
『心配した』という言葉を聞いて、申し訳なくなる。
もう一度謝って、頭を下げた。
それにしても…こんな剣幕で明に叱られたのなんて本当に久しぶりで。
それだけ心配してくれたんだって思ったら、なんだか目の前がぼやけてきた。
いつもいつも、私は明に迷惑をかけてばっかりで…。
もっとしっかりしないと、「もう守ってくれなくていいよ」なんて言えない。
心配する事なんてひとつもないくらいにならないと…。

