『ママ…?』
パッと男の子がパーティー会場のほうを振り向く。
私にも聞こえた声。
あれが、この子のお母さんの声なのかな。
『あれ、君のお母さんの声?』
『うん!ママ、僕を探してるんだ!』
男の子―――ルカ君が、私の手を引っ張って走り出す。
…と言っても、やっぱり小さな男の子だから私は小走りになるだけだけど。
声の聞こえたほうに走っていくと、私がパーティー会場から出てきた辺りにマリンブルーのマーメイドドレスを着た背の高い女性が辺りをキョロキョロと見渡していた。
『ママ!!』
ルカ君が女性を見て叫ぶ。
それに気がついた女性も、ルカ君を見てこちらに駆け寄ってきた。
『ルカ!もう…どこに行っていたの。心配したのよ…?』
『ごめんなさい…』
ルカ君が涙声になりながら謝り、女性の胸に飛び込む。
女性も膝を折り、ルカ君を大事そうにギュッと抱きしめた。
よかった…。
お母さんに抱きつくルカ君を微笑ましく見ていると、ルカ君のお母様が私に気がついたみたいで、ルカ君の方に手を置いて立ち上がる。
『あなたがルカをここまで連れて来て下さったんですね。ありがとうございました』
『いっいえ!そんな、お礼を言われるようなことはしていません…』
私より確実に10cmは背の高いルカ君のお母様が微笑みながら私にお礼を言って下さった。
スタイルがとても良く、金髪の髪に白い肌。
にっこり微笑むその姿は女優さんも顔負けで…。
確かに、ルカ君のお母様だわ…。
同姓なのに、その綺麗さに見惚れてしまう。
『本当にありがとうございました。お礼をしたいのですが…』
『そんな!本当に私は何もしていませんから!』
『けれど…』
『本当に、お気持ちだけで十分です』
私はただルカ君と歩いていただけなのに…お礼を貰ったりしたらこっちが申し訳なくなっちゃう。
『そうですか…あ。それなら…』

