私の歌声が、夜の静かな中庭に響いていく。
『お姉ちゃん…歌が上手なんだね!』
『ふふ…っ。ありがとう。英語だけど、意味わかったかな…』
『わかったよ!僕、英語のお勉強もしてるから!!』
す、すごい…。
まだ5,6歳に見えるのに…。
『お姉ちゃん、日本人でしょう?それなのに英語もフランス語も話せるの…?』
男の子が、不思議そうに見上げて来る。
その疑問に満ちた視線に、ふと目元を和らげた。
私が三ヶ国語を話せる理由。
『英語はね…私の幼なじみが小さな頃から叩き込まれてて、それを一緒になって聞いてるうちに話せるようになったの』
そう…。明は、小さな頃から陽介おじさんに英才教育を受けていた。
そして明の家に遊びに行く事の多かった私は、明と一緒になって陽介おじさんから英語を習っていたから、話せるようになったんだ。
日に日に理解できるようになって、話せるようになっていくことが楽しくて…。
おじさんにねだって色々と教えてもらってたりしたなぁ…。
そのおかげで、語学に関してだけは明と並べる自信がある。
『じゃあ…フランス語は…?』
くりっとした瞳を向けてくる男の子がとても可愛い。
その瞳を見ていると、また「きらきら星」についての懐かしい記憶が頭に浮かんできた。
『私のおじいちゃんはね、フランス人なの。お母さんはそのおじいちゃんと日本人のおばあちゃんから生まれたから、ハーフ。ハーフのお母さんから生まれた私は、クォーターって事になるかな…?』
『そうなんだ…!』
『うん。だからね、フランスのおじいちゃんからフランス語を習ったの』
男の子が目をパチパチさせている。
それを見てくすっと笑った私は、男の子に話しかけた。
『ねぇ。さっき歌った「きらきら星」ってね、もとはフランスの歌なんだよ…?』
『えっ!?本当!?』
『うん』
『歌って!歌って!お願い!!』
男の子が、ぴょこんぴょこんとはねて私にねだる。
その可愛らしい姿に、自然と笑みがこぼれた。
私は、笑顔のまま歌い出す。

