「…よく、わかんないかも。でも、人ごみはニガテだし…。パーティーってなんかすごく疲れちゃう…」
「やっぱり、慣れないから緊張してるんだろうな。疲れたら休んでてもいいから…な?」
「…うん…」
でもそう言われると、逆に申し訳ないような気もしてくる。
明は色々な方と挨拶しているのに、私だけ休んでるなんて…
「でも、ま。逃げ出さなくなっただけ進歩なんじゃねえの?」
「…ほ、本当?」
「ああ。以前の早和なら回れ右して逃げ出してたと思うし…?」
「う…」
ニヤッと笑って私を見て来る明。
何も言えなくて俯いてしまう。
それにしても…久しぶりに明のイジワルな笑顔を見た気がする。
この頃何かと事件?…とでもいうのだろうか。とりあえず色々あったし、色々と狙われたし…。
明はずっと優しかったなぁ…。
「Une maman!Une maman!!」
「…え?」
ふと、遠くから微かに声が聞こえた。
「Une maman!!」
微かに聞こえ続ける声を頼りに歩いて行くと、パーティー会場の外に出る。
「わ…綺麗なお庭…」
「Une mamanー!」
キラキラとイルミネーションが輝く中庭を見つめ感嘆のため息をつくと、ひときわ大きく声が聞こえた。
その声に、また足を進める。
先ほどから聞こえている言葉の意味。
それは―――………
「Quel était là?(なにがあったの?)」
「Oh?(え?)」
『Une maman』。
それは、フランス語で「ママ」や、「おかあさん」という意味…。
少し歩くと、中庭の中心にある噴水の前で、小さな男の子がうずくまって泣いていた。
その子に、優しく話しかける。

