私の声が聞こえたのか、社務所の前にいた人がパッとこっちを向いた。

それは、私が探していたその人。


「明…!」


足が痛かったのも忘れてパタパタと明に走り寄る。

男の子の手を離したのにも気付かなかった。


「早和!?お前、どこにいたんだよ!」

「明こそ!私ずっと探してたんだよ!あの人も手伝ってくれて…」


くるっと後ろを振り返った先には…


「あれ…?」


誰もいなかった。

ついさっきまでそこにいて、私の手を引いていてくれたのに。


「あの人って誰だよ?」

「ついさっきまでそこにいたはずなの。明を探している時にぶつかっちゃった人なんだけど、優しくてね、一緒に明を探してくれたの。お礼を言いたかったのに…」

「…帰ったんじゃないか?」

「そう…かなぁ…」


少し納得がいかない。

でも、やっぱりそうなのかな…?


「まったく…どこではぐれたんだろうな」

「うん…。気が付いたら隣に明がいないんだもん。びっくりしたよ」

「俺も。そうとう探しまわった気がする。どこかですれ違ったりしてたかもな」

「…そうかもね」


顔を見合わせてお互いに苦笑した時―――……


ド――――――ン………

「わぁ…っ!綺麗!!」


夜空に、大輪の花火が咲いた。

ちょうど社務所のある辺りは綺麗に見える絶景ポイント。

後から後から咲く花火を眺めていると、ふと左手に温かさを感じた。


「…明…?」

「こうしてれば、もうはぐれないだろ?」


明が、少し照れたように笑う。

ぎゅっと握られた手が温かい。


「…うん」


それにつられて、私も少し、はにかんだ。