―――早和side

や、やばいっ!転んじゃう!!

ギュッと目をつむる。

身を固くした瞬間。


―――グイッ!


「ひゃ…っ!」


誰かに強く腕を引っ張られて抱きとめられた。

心臓がバクバク言ってる…。

と、とりあえず転ばずにすんでよかった…。

ほっと息をついて、助けてくれた人にお礼を言おうと思ったのだけど…

抱きとめられた形のまま、動けない…。

えっと、そろそろ離してもらえないかな…。


「…あ、あの…?」

「あっ!ああ!ごめん!!」


私が声をかけると、助けてくれた男の子は、謝って解放してくれた。


「あの、ありがとうございました」


ぺこっと頭を下げる。


「いや、俺がぶつかちゃったのが悪いんだし…ごめん」

「い、いえ。私もよそ見をしていたので…。謝らないで下さい」


すごく申し訳なさそうにしている目の前の男の子を見上げる。

背が高いなぁ…。

明と同じくらいあるんじゃないのかな。

それに、結構カッコいいし。

モテそうな人だな…。

……でも、明のほうが勝ち。

失礼だけど、そう思ってしまう。

だって私の基準は明だもん。


「…誰か、探しているの?」

「…え?」


いきなりそう訊かれて戸惑う。

なんでわかったんだろ…。


「なんでわかったんだって顔してるね。だって君、俺とぶつかる前からずっとキョロキョロしてたから…」

「見てたんですか?」