―――明side
「…どこいったんだよ」
辺りを見回すけど、早和の姿は見えない。
というより、人がたくさんいすぎてよく見えない。
ちょっと目を離すと、すぐにこれだ。
本当に危なっかしくて放っておけないな、うちのオヒメサマは。
今の所、大きな妖気は感じていないからそういう危ない事にはなっていないと思うが…早和はあの格好だし、あの容姿だからナンパされてる確率が高い。
「…はぁ…」
早く、見つけないとな。
とりあえず歩き出す。
『ただの幼なじみですっ!』
ふと、さっきの早和の言葉がよみがえった。
…正直、あの言葉は思っていたよりも重く俺の心にのしかかった。
わかってるんだ。
早和が、俺の事をそんな風に見ていない事くらい。
だけど、やっぱり頭で考えるのと直接言葉をつきつけられるのとでは訳が違う。
「幼なじみ」って、とても近くて…きっと他ではわからないような事も見えたりするんだと思う。
だけど、それは「家族」とも似ていて…。
「恋愛対象」としては見られない。
そんな、微妙な距離。
俺は、その関係を壊せない。
壊してしまうと、もう元通りにはなれないから。
壊してしまった後の道は、2つ。
早和が俺を受け入れてくれて、より近づけるか。
想いが届かずに、すべて遠ざかるのか。
たぶん、今の状況じゃ後者だろう。
…だから、何も出来ないでいる。
「…情けねぇ」
…自然と、そんな呟きがもれた。
それでも、あきらめるなんて絶対に出来ない。
ずっとずっと、俺が守ってきた女の子だから。
「…早く見つけないとな」
泣き虫で、優しい、大切な女の子を。