シンデレラは、不幸だった。

意地悪な義姉、継母たちに虐められて。

だから、幸せになりたかった。

大好きな人と、自分を幸せにしてくれる人と。

悪く言えば、自分を幸せにしてくれるなら、誰でも良かった。

だから、王子様と幸せになれた。





だけど、彼女は。

シンデレラになるはずだった彼女は、一目惚れをしてしまった。

誰でもいいというシンデレラの条件を、守れなくなった。

シンデレラは1人の男を、愛してしまったから。

しかし、その男というのは、親友の、ジュリエットの想い人。

ロミオだった。

シンデレラは嘆いた。

どうして、どうして、…と。

大切な親友を泣かせない訳じゃない。

でも、自分も幸せになりたい。

そこで、気が付いた。


自分は、シンデレラじゃ、ない。


シンデレラは何もかもを捨てて、王子様と新しい幸せを築いた。

だけど、自分は。

捨てられない。

大切な親友を、泣かせては、いけない。

彼女には、幸せになってほしいから。



シンデレラは、身を引いた。

王子様を、ロミオを手放したのだ。

大切な親友、ジュリエットに、幸せになってほしいから。





シンデレラは、ジュリエットになった。

ずっと1人の男を想い続ける、悲劇のジュリエットに。

結ばれないと分かっていながら、その男を、ロミオを想い続ける。





でも、彼女は、悲劇のジュリエットでは、なかった。

喜劇のジュリエット。

だって彼女は、幸せになれたから。

大好きな王子様と幸せになるより、

大切な親友が幸せになる方が、彼女の幸せだったから。









「さよなら、王子様」