『アイシテル』を忘れない。



沙雪side


「…ありがとうね?」
「えっ?」

「わたしの、好きな人。」
「うん…。」

杉本沙雪。
悠ちゃんの仮彼女…。

昨日まで、わたしは那智と付き合っていた。


「夏音は…、悠ちゃんがすきなんでしょ?」
「…え?」

夏音はゆっくりうつむいていた顔を上げた。


「ど、してそう思うの?」
「…わたしと同じ目、してたから。」
「分かってた―…?うん。あたしは、悠が好き。」

やっぱり。
悠ちゃん本人は気づいていないみたいだけど、那智と悠ちゃんは結構モテている。
悠ちゃんはちょっと近づきにくいらしい…。
だから、悠ちゃんにはそんな意識が全くないんだ。

…那智は、もともと女癖が少し悪いから、直ぐに女の子とどっか遊びに行っちゃうんだけど。

「悠ちゃんの事、わたしも好き、って言ったら…どうする?」
「あたしは、沙雪に譲るよ?譲る…って言ったらおかしいかも知れないけど。」

夏音は、こうして、自分のことよりも先にわたしの事を考えてくれる。
わたしは夏音のそんな優しさが大切で…、

でも時々、辛くなってしまうときもある…。