私は何時から此処にいたんだろうか。そんなことさえ思うぐらい奈津美の体は冷えていた。

季節は冬。雪がはらはらと舞い、地面に落ちては溶けてゆく。

そんな中、奈津美は傘もささずに一人、湖の前で佇んでいた。

「――私、一人になっちゃった……。」

奈津美は誰にも向けられない言葉を空に向かってつぶやいた。
奈津美は五日前父を病気で亡くした。母は奈津美が5歳の時に事故で亡くなっている。
しかも奈津美の両親は天涯孤独で親戚がいない。

だから奈津美にはもう家族はいない。
その残酷な事実だけが奈津美に降りかかっていた。

しかし奈津美の心に悲しみは無く不思議と空虚だった。
はたから見れば残酷だと思うかもしれないが彼女の心を例えると「それ」になる。

でも空虚というよりは何か違う。瞳にはそんな光があった。

孤独。それが正しいのだろう。
どうしても消えないこの思いだけは振り払えなかった。

嗚呼この湖の中に入ったら両親のところへ行けるだろうか。

私も一緒に――――……。