榊がああやって俺を呼び捨てにするのは久しぶりだな。
あれを最後に聞いたのは確か父さんと母さんを亡くした日だった。
葬儀を終え、呆然としていた俺に
「しっかりしろ、翔」
そう肩を叩いて言ったのが榊だった。
榊は父さんの大学の先輩で。
父さんと母さんが亡くなってから俺に仕えるようになった。
「私は翔様の成長を見守ることが仕事ですから」
そう言って。
チン
エレベーターの到着音が鳴り、でる。
柚子と初めて食事をしたホテル。
「大丈夫さ..絶対に」
そんな独り言を口にしながらホテルのレストランへ入った。


