「別に‼急に話しかけられたからびっくりしただけ」


「ふーん?」

納得したような返事をする孝の顔はにやにやしたまま。


本当は分かってるんでしょ、って思わず言いたくなる。

孝は突然立ち上がり


「あー…そろそろ帰るか‼このままここにいたら凍える‼」


「……そっか。」

私も立ち上がり、歩き出そうとした孝の手を握った。


「冷たっ‼孝の体冷えてるじゃん‼」


「そうか?」


「そうだよ‼どうしよう、今日はマフラー持ってきてないんだよね…」


「ははっ、大丈夫だよ。笑美子の手がかなり暖かいし、それに…」


孝はそう言って、私と繋いだ手をコートのポケットの中に入れた。


「ここも暖かいから、な?」


「ホントだ…」


「じゃ、行こう。」

私は、孝のポケットに手を入れたまま歩き出した。