隣の男はよく見える


「やっぱ、気づいてなかったんだ。」

「どうして・・・。」

「最初は分からなかったよ。
さすがに3才から一度も会わなかったんだから。
でも、あの日エレベーターの前で名前を聞いたときに、
もしかしてって思ったんだ。さくらちゃん。」


「そうちゃん・・・なの?」


「信じられなかったらあの時の傷でも見せようか?」






「いい、見たくない。」



あの事件・・・

あの光景を思い出してしまう。



「見せないって。ま、たった1針縫っただけなのにあれはすごい出血だったよね。」


「1針?」


「そっ、頭だから大出血したけど大したこと無かったんだよ。
周りは大騒ぎしたけどさ。」


「私、大怪我させたって思ってた。」


「だから、気にすることなかったんだって。
まっ、縫った後の部分に髪が最近まで生えなくって
『ハゲ』があったのは事実だけどさ。」



ハゲ?


ぷっ・・・


思わず笑ってしまった。



このイケメンにハゲは似つかわしくない。



「今さ、密かに笑ったろ。」

「うんん。笑ってないよ。ハゲぐらいで・・・ぶっ・・。」

「笑ってんじゃん。今は、ほとんど生えてっからな。」

「うん・・ごめんね。」

「昔のことだし許す。」

「だよね。」


「責任とって結婚して。」