『ひ…、…ひかる!!』


目覚まし時計の音に気付かないひかる。
俺がうざったくなって起こす。


「…うーん…わかったよぉ…。」


まぶたも開けずに枕の横の目覚まし時計に手を伸ばす。

やっと止まったよ…。



今二度寝したコイツは東陽 ひかる (とうようひかる)。
この家に居候してる。中三女子。



中三っていう体つきでもないけど。
なにしろ…。



「ひかる−?開けるぞー?」



おっと、哲志(さとし)だ。
この樋月(ひづき)家の次男坊。



「ったく、いつまで寝るんだよ!!」


ドアを開け、ひかるから布団を剥ぎ取る。


「きゃあぁ!何すんの!?」


「フン、そんなに寝てんのにチビなままだなんて、お前の体おかしいな!」



いつも二人のやり取りには目が覚める。
面白いけど少し痛々しいかな。



「…今日、朝練だろ。置いてくぞ。」


言い合いをやめて音量を落としてボソリと言う哲志。同じクラスで同じバスケ部。なんだかんだ言って優しいんだよな。



「ふふっ、やだよ。すぐ行くよ。」



ニッコリするひかる。
この無邪気な笑顔に、時が止まるようだった。


哲志が出て行ったあとひかるは俺を見上げた。



「もう、起こしてよ!つき!」



『いや、俺起こしたし!』



覚えてねェのかよ…。
“うそぉ、まただ私!”なんて言ってる。
バカだな…。


そう思いながら自分の口の端が上がるのがわかった。
…その尊い意味はわからないまま。