既に日が沈み、西の空には赤くグラデーションができている。

すぐに消えてしまうその赤に、少女の影は染まっていた。



肩より少し伸びた綺麗な夕日色の髪は、自分の血で余計赤く染まっている。

彼女が倒れる周りにも、国軍の兵が山ほど倒れていた。


どれも外傷はなく、焦げた者が多い。



その倒れる少女の近くを、炎の渦が通った。

近付いてきていた国軍が巻きぞいを食らう。



足止めを食らっている間に、男は少女を抱き上げた。


大体20代半ばだろうか。

真っ黒で無造作に伸ばした髪と、180はあるだろう背丈がやけに目立つ。

「人形保護」

男が呟くとコートをまとった人々が足止めを食らっている軍に走って行った。


また爆発や銃声が響く。
それを見届けて、男は駆けだした。



それを国軍の本部で見ていた大総統は思わず言葉を漏らした。

「……また逃げられたか」