「ごめん。ごめんね、有美。傷つけないためだったのに、最期に傷つけて……。」


『いや、だ。お願い……お願い。―――…死なないで。』




私の言葉を聞いたマーヤは、ふっと泣くように、柔らかく微笑んだ。



そして、




「有美、あたしね、黒髪の有美の方が好きだな。綺麗だもん。」



フェンスを掴んでいた手を、離した。




『マーヤ!』


私は急いで立ち上がり、走ってマーヤに手を伸ばす。


けれど



指先が少し掠っただけで、マーヤの手を掴むことはできなかった。




そしてマーヤは落ちていった。


私の目の前で

嫌みなくらい青い空の下に。