カツカツと階段を上る。

誰もいない校舎。

静かな教室。

なんだか昔に戻ったみたいだ…


こんなオレンジ色の空を、よく姫と見ていたものだ。なんだか懐かしい…


また、一緒に見れる日が来たらいいな…


ガラッ



俺は誰もいないはずの教室を開けた。

でも何故か、人がうずくまっているのが見えた。


「…っ!」
「あ…」

また…だ。


時が止まる。

心臓の音も聞こえない。


どうして君は俺が会いたいと思っている時に現れるんだ…

どうして…姫…?


紛れもなく、また俺の目の前にさっきのアノ彼女がいる。


なんだよ…


俺にどうしろってんだよ…




「…さっきの…」
「…うん…。ごめん、さっきは急に呼び止めたりして…」
「ううん。…どうしたの?」
「携帯忘れて…そっちは?」


何だか不思議だ。

今、何でもないように普通に会話している。

ほんと、昔に戻ったみたいに…



彼女は、少し座り込んで、何かを探していた。


「探し物。落としたみたいで…大切なものなの…」
「そっか…」


ズキン━━━…

なんだ?

この感じ…


「どんなやつ?」
「星のついたピアス…探してくれるの?」
「うん…」
「ありがと…名前…まだ聞いてなかったよね?」
「あ…うん…。滝嶋直也」


初めて会ったみたいな自己紹介。

なんだか胸が苦しい…


「滝嶋君…か」


止めろよ…滝嶋なんて…


昔みたいに、俺を呼べよ…

そんなよそよそしい声なんて、俺は求めていない。