春風が通りぬけるとき。



『え…、駄目なの?』

「んー…、そういうわけじゃないけど」


唸りながら答える。


『じゃあ、一緒に行こ?ね?』


幼い子供がおねだりするみたいに言うものだから、プッと吹き出してしまった。


『……何で笑うの』


ムゥと拗ねる様子が顔を見なくとも手に取る様にわかってしまい、意味もなく片腕を上げながらごめんごめん、と謝る。


『……それで? 行ってくれる?』


不安そうな、でも懇願するみたいなものが電話ごしからひしひしと感じとれた。


(目の腫れは…、今日1日中冷やしてなんとかするとして)


もしそれでも駄目なら、普段は滅多にすることがない化粧で隠そう。

(久しぶりに、萌と買い物行きますか)


ふぅ、と後頭部をグシャグシャ掻き乱しながら息を吐き出す。