春風が通りぬけるとき。



「何で、そう思うんですか」


そう言った真帆の声は妙に硬い。


(あたしが優しい…?)


自嘲気味に笑みを零す。

自分のことしか頭にないのにそれのどこが優しいのだろうか。

ふたりが大好きとか言ってるが、結局は心の底から応援できないでいるというのに。

ギリリと下唇を噛むと、不意に先生が強く押さえ付けていた下唇に触れる。


「…止めなさい、自分を傷つけるのは」


彼女の目は真剣味を帯びていた。

言われたとおりに、ゆっくりと歯を下唇から退かす。

すると先生は少し安心したような表情を少女に一瞬だけ向けて、彼女を包んでいた腕を自ら離した。


「先生…?」

「井上さん」

「はい」


背中から腕は離されたが、代わりに両手が肩にのっかる。