春風が通りぬけるとき。



「身体が病気でなくとも、心が風邪をひいているのなら、私が治してあげなくちゃね」


目を細め、ふわりと可愛いらしい笑顔をみせる。


「…それに今の貴方の顔、他の生徒に見せては駄目だわ」

「…そんなに、酷いですか?」


シュン、と眉が垂れ下がる。


「んー…、酷いというか、今の貴方はとても泣きそうな表情をしているのよ」

「泣き、そう?」


そう口で復唱すれば、肯定の意を示す様に頷いた。


「とりあえず話は聞くから、ソファーに座ってなさい」


先生は人差し指で彼女の目の前にある薄い黄色のソファーを指す。

真帆は素直にその明るい色をしたソファーに腰をおろした。

保健室自体、ストーブがついており温かいのだが、それとは別にこのふかふかのソファーにも包む様な温かさを感じる気がする。


でもきっとそう思えるのは、先生の優しさがあるからだ。


「井上さん、何組かしら?」

「六組です」


六組…と口で唱えながら、チラリと置いてある紙を横目で確認程度に見やる。


「えっと…、池先生であってる?」


コクンと首を縦に振ると、彼女は池先生に伝えてくるわねと少女に笑んで保健室を出ていった。