前方にも同じ様に登校してきた生徒等が流れており、下駄箱で靴を上履きに履きかえている。

彼女もその波にのり、素早く履きかえた。

三年の教室は一階にあるのだが、それ以外は階段をのぼらなければ自分の教室に辿り着けない。

だが真帆は教室には向かおうとせずに、行き来する人達の邪魔にならない様脇に避けながら一階の隅にある保健室に足を進める。

ガラリと決して大きくはないであろう音が辺りに響く。

三年の教室があるところは騒がしいのだが、ここはとても静かな為、小さな音でも耳には大きく聞こえた。 


「…あら?」


可愛らしい声が小さな疑問を発する。


「井上さん?」


その声の主は、何か書き物をしていた様子で今現在手を止めて、こちらに目線を向けている保健の雪原先生だ。