『嫌です』
それでも、妥協しまいと熱くなった頬を無視して私より遥かに背の高い彼を睨み付ければ、
『…そんな可愛い顔しても無駄です。必ず迎えに行くから大人しく家で待っていてください』
眼鏡の奥の冷たい程理知的な瞳が困ったように細まった。僅かに眉を曲げたけれど全く怖くないのは何故かしら。
『敬語おやめにならないの?』
膨れて、指先を上げれば彼の頬を両手で引き寄せる。
長く続く敬語口調も、いい加減やめて下されば良いのに。
時折、こうして不機嫌に覗くけれど愁哉さんは困ったように目線を逸らす。
それ以上強く言葉を紡げない私はその意志を込めて強く睨めば彼の繊細な細い髪が揺れた。

