嘘つき【-ring-】


『迎えに行くから、家で待っててください』


そう言った彼に、私は首を振った。


『子供じゃありませんもの。それにお仕事でしょう?終わってから迎えに来ていたら日付が変わりますわ。そうだ!近くで待ち合わせしましょ?』

いつも送迎付きで過保護な位心配性な彼。待ち合わせ、なんて勿論した事がある筈もなく。そういえば、誰かと待ち合わせた事が今まで無い事に気付いて、尚更引き下がらなかった。


『駄目です。仕事が遅くなるかもしれない、あなたに何かあったら立ち直れません』

全く表情を変えない綺麗に整った涼しい顔で、そんな言葉を何の気負いもなく綴ってしまう。そんな方なのだ、と納得させてはいても頬の熱が上がる。