握られた腕の力が予想外に強くて、それなのに笑顔を崩さない男の人に無意識に眉を潜める。

…どうしてこんな事になったのかしら?


「お断りします」

口調を強めても、

「めげないよ~」

と掴んだ右手にまた力を篭める。


めげて欲しいですわ。


フゥとため息をついて次の言葉を探す前にその人は私の腕を掴んだままスタスタと歩き出す。


「こ、困ります」

「可愛いー口調だよね?狙ってるの?何系?」


このお方は何を言っているのでしょう?


相変わらず軽薄な笑みは瞳にどこか嫌悪をしてしまいそうな色を映して、必死で振りほどこうにも「可愛いー」なんて言葉が返ってきて会話が成立しない。