愁哉さんの車に乗ってから、いつか見たような過ぎる景色がそれでも違って見える。
壁のない世界は広過ぎて迷ってしまう。
崩れない敬語も、変わらない姿勢も、どこか距離を置いた態度も、以前と同じなのに、やっぱり違っていて、
「敬語おやめにならないの?」
本当は、もうそんな事気にしてはいないけれど、
「いい加減にやめないとと罰をつくりますわ」
私だってあなたに歩み寄りたいの。そんな素顔を見ていきたいの。
小さく呟いてからそのままウインクすると、愁哉さんが隙のない端正な顔立ちに悪戯な笑みを添える。
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