嘘つき【-ring-】


僅かに緩んだ表情に愁哉さんの怜悧な美貌が溶ける。そうして、以前は見る事の出来なかった表情を見つける度、私は胸が弾んでしまう。

愁哉さんの言葉に、やっと引いた熱がまた上ってどうしようもない。


「…もう忘れてほしいなんて言わないから、そんな顔しないで下さい」


「愁哉さん、」


「あなたに嫌われたら困る」


指先が私の髪を掬って、ひんやりとした風が左頬に心地良い。