その呼び方はやめて下さい、なんて愁哉さんは言わなくて、ただ少し笑った。 「何故、この場所なのか聞いても?」 愁哉さんは電飾のツリーを見上げて、表情を崩さず私に問い掛ける。 私も思わず、視線を漂わせればさっきまで私が居た場所には女の人が立っていて、目が合った気がして何となく頭を下げた。 ────この場所を選んだのは、 もう一度愁哉さんを見つめて微笑む。 「この、指輪を頂いた場所ですから」 薬指にピタリと嵌まるプラチナリング。飾り立てたものではない、シンプルなペアリング。