「これだから目を離せない、それならせめて視界に入る場所にいて下さい」
以前似たような言葉を彼の口から聞いた。だけど、あの頃とは違うものが確かにあって、それは果てしなく優しいのに、それに甘えてしまっていいのか自分でストップをかけてしまう。
フゥと息をついてレンズの奥の理知的な瞳を僅かに細める仕草は愁いを帯びて色気さえあるのに清廉さを感じさせて、言いようのない大人の雰囲気に息を飲む。
「…ごめんなさいね?」
居場所なく身を縮めると、愁哉さんを見上げた。取り払われた壁の向こうは限りなく広くて、いつもこうして迷ってしまう。
「…全く」
愁哉さんは息をつくと、力を緩めて私をそっと腕から降ろした。

