嘘つき【-ring-】


線の細い髪が電飾に照らされて淡い茶色に透ける。眼鏡の奥の瞳は吸い込まれそうに深くて、女らしさなど全く見出だせられないのにどこか中性的に見える、整った顔立ちは不機嫌そうに眉を曲げている。


「何度も言わせないでくれ。その手を離さないと理性がブチ切れる」


温度の全く無い表情とそれに伴う冷淡な声に、まるで死刑宣告を受けたかのように目の前の男の人は青ざめて、即座に私を掴んでいた腕の力が抜けていくのを感じて振りほどいた。
それから、チッと舌打ちをしてその男の人はあれだけ饒舌だったのが嘘のように捨てゼリフも吐かず背を向けて逃げるように走って行った。