男の人のククと笑う面白がる空気を感じて体が強張る。 もう一方の手が私の肩に伸びて、ビクリ、と動いた瞬間、 ───ふわり、と体が浮いた。 「…その手を離せ」 聞き慣れたその声に、一瞬で体の力が抜ける。 普段は規律の取れた低い声は今は僅かに息を切らして更に重く放たれた。 「なんだ、おまえ」 「初対面の相手に向かっておまえとは失礼だな」 淡々と、だけど充分威圧的な声と、目の前の人が刃向かうよりも凍り付きそうな雰囲気を見せたから、その圧倒的な存在感に私も心臓を掴まれたように固まってしまう。