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───……いまだ掴まれたままの手首、抗うほど力を強めて歩調を早める見知らぬ人に、私は息を吸い込んでハンドバックを力の限り振り上げた。
「何すんだよっ」
カッとなった見知らぬ人の顔にはもう笑みはない。
そのギラギラとした目に悪寒を走らせながら、全く改善の方向が見えない状況に泣きたくなった。
愁哉さんが迎えに来る、と言うのも聞かず、携帯に伝言だけ残して強行的にこの場所に来た罰なのだわ。
自分の軽い行いがどのような方向に向かうのかも考えないで、意気揚々と待ち合わせ場所を指定した自分にため息しか漏れない。
思えば、どこか初めからネガティブだった思考は愁哉さんの言葉を無視した、そんな後ろめたさだったのか。
前を歩く男の人が私を振り返ったのを感じて思わず視線を下に向ける。
……泣くものですか!
下唇をギリと噛んだ。

