だけどとにかく、受験生の今のオレには余計な物は必要ない。

「悪いけどオレ、受験生なんだ。夢があるし、今はそれを優先したい。だから好きとか、そういう感情は…必要ないんだ」


初めてこんなに、人に対して自分の意思をはっきり伝えたな……。


『……そっかあ……』


……もしかして、ちょっと言い過ぎたかな?






「……いや、あのね……」


何を言おうとしていたのかは、自分でもわからなかった。

だけど、頭から離れない、カノジョの涙は、もう見たくなくて。

だからたぶん、何かのフォローを入れようと思ったオレの言葉を制したのは、カノジョの方だった。



『じゃあ、未来、せんぱいの夢を応援する!邪魔しない!

ほんとはね、手を繋いだり、ぎゅーってしたり、一緒にご飯食べたりしたいの。

でも、せんぱいが優先するものを未来も優先する!見てるだけだから、それならいいでしょ?』


応援?

手を繋ぐ?ぎゅー?一緒にご飯?


何を言っているんだ、この子は。

やっぱり、何もわかってなかったな。






自慢じゃないけど、普段のオレは、優しいだとか、温厚だとか言われている。

人に声を荒げたり、きつい意見を言うなんてありえない。




多分だけど。

オレのことを好きだと言ってくる女たちはこんな風に感情を表に出すオレを見たら幻滅するんだろうな。


だから、女は苦手なのだ。


理想像ばかり先行したり、ちょっと冷たくしたらイメージと違うだの、なんだの。




それなのに。

この子は、オレが素顔を見せて、直球で言ったのにめげないのか……。

やっぱバカだよ、吉田未来。







初めて出会った日に、オレを好きだと言った吉田未来。

なぜかその日からオレにつきまとうようになった。