「そんな事、気にすんなよ? 急いで支度するから、ちょっと待ってくれ」

「あ、いや…それだけじゃないんだよね。実は一緒に帰ろうって人がいてさ…」

「ん? 誰だよ?」

すると圭介がチラッと出口の方に視線を送ったので、達也もそちらを見ると、祐子が出口の手前に立ってこっちを見ていた。

「ふーん、そういう事か…」

「あ、いや、一緒に帰るだけなんだよ。何か話があるとかないとか…」

圭介は顔を赤くして目を泳がせ、そんな圭介に達也はフッと笑った。

「分かったから、早く行ってやれよ」

「うん。じゃあ…」

と言って行き掛けてから、圭介は不意に立ち止まり、達也を振り返った。

「あの映画なんだけど、明日封切なんだよね……」