体育館の裏で、漸く達也は瑞希を見つけた。

「瑞希!」

達也が叫びながら側に駆け寄っても、瑞希はピクリともしない。
瑞希は全身ずぶ濡れで、背中を丸めて倒れていた。
達也が瑞希の濡れた黒髪を手で払うと、目を閉じた蒼白な顔が現れた。

(ま、まさか……)

「瑞希、どうした!? 目を開けろ! 開けてくれ!」

達也は瑞希の体を抱きかかえ、何度も叫びながら瑞希の体を揺すった。

「瑞希、しっかりしてくれ。頼むから……」


すると、瑞希はゆっくりと、その瞼を開いた。焦点の定まらない、虚ろな目ではあったけれども。

「瑞希、大丈夫か? 俺が誰か分かるか?」

焦点が定まらなかった瑞希の瞳が、ゆっくりと達也の顔を捉えていった。

「いけ…がみ…くん?」

「そうだよ、俺だよ。何があった? 誰にやられた?」

「ごめん…なさい」

瑞希はそれだけ言うと、再び目を閉じてしまった。

「バカヤロー。何でおまえが謝るんだよ? 後でデコピンだからな!」

瑞希が一瞬笑ったように見えたのは、達也の見間違いだろうか…

達也は自分も濡れる事など構わずに、瑞希の冷え切った小さな体を包むように抱きしめた。そして、

(もう二度と、こいつをこんな目に合わせない。こいつは俺が、絶対に守る!)

そう心に誓うのだった。