その後も駅に着くまでに2回、同じような事、つまり達也の男友達からの冷やかしがあったが、その度に達也の後ろに隠れてしまう瑞希だった。


駅に着き、改札の前まで来て、瑞希は達也を見送るような体勢をとった。

「あの…、ありがとうございました!」

瑞希にしては頑張った大きな声で達也にお礼を言った。
達也にずっと伝えたかった”ありがとう”の気持ちを、瑞希はやっと言葉にすることが出来た。

そして達也から鞄を受け取ろうと手を伸ばしたのだが…

「いやいや、そうじゃなくて、俺が中山さんを家まで送って行くんだよ」

と達也に言われてしまった。

「でも、ここからは近いですから…」

「じゃあ行こうよ?」

事もなげに言う達也に対し、瑞希はどうすべきか迷っていた。