君に笑顔を ~地味子に恋したイケメンのお話~

「先生、瑞希の事を頼みます」

「その前に警察を呼びましょうよ?」

「それはいいですから、瑞希を…」

達也の真剣な目に気圧され、「分かったわ」と春田は言い、瑞希に近付き畳に膝を着いた。

達也は立ち上がると、義父の前に立った。義父よりも10センチほど達也の方が大きかった。

「助かったぜ、あんちゃんよお」

「ふざけんな」

達也の声は、感情のないような、低く冷たい声だった。

「何だよ、やる気かよ?」

義父は達也の胸倉を左手で掴むと、右で拳を作って達也の顔を目掛けて突き出した。

ガツッと音がして、義父の拳が達也の口の左に減り込んだ。

瑞希の、悲しげな叫び声がした。

達也の唇が切れ、赤い血が一筋流れて落ちた。

「痛え…」

達也は、わざと義父に殴られたのだった。瑞希が受けた痛みを、少しでも共有したかったから。