君に笑顔を ~地味子に恋したイケメンのお話~

達也がその棒に手を伸ばすと、「それに触るな!」という義父の声が背後から聞こえたが、無視してその棒を退かし、襖を勢いよく開けた。

暗い部屋の中に目を凝らすと、その隅でうずくまる、見慣れた制服の後ろ姿があった。

瑞希だ。

(良かった。瑞希は生きている)

「瑞希、大丈夫か?」

達也が瑞希の背中に近付いて行くと、

「来ないで…」

か細い声で瑞希はそう言った。

達也はそれに構わず瑞希の側に行き、腰を落として瑞希の肩に手を置いた。

「瑞希、無事でよかったよ…」

瑞希は無言で肩を上下に揺らした。泣いているのだと達也は思った。

達也は俯いた瑞希の顔を覗き込むようにし、「顔を見せてくれ」と言った。しかし、

「イヤ」

と言って瑞希は横を向いてしまった。