「先生はこの子を知ってるんですか?」

「え? まあね」

「なぜですか?」

「それは……中山さんの成績が優秀だからよ」

「あ、そうですか」

と返したものの、達也は春田の様子がちょっと変だなと思った。目が泳いだ感じだったし、校医が生徒の成績に興味があるとは思えないからだ。


瑞希を先に外へ出し、続いて達也が保健室を出ようとしたら、「池上君、ちょっと……」と春田に呼び止められた。

「はい?」

達也が振り向くと、春田は手でおいでおいでをしている。

「何ですか?」

と言いながら、達也が春田に近付くと……

「池上君、あの子に優しくしてあげてね?」

春田は声をひそめてそう言った。

「はあ?」

達也は、春田の言う意味が解らず呆気にとられていたが、春田は真剣な顔で更に続けた。

「あの子が怯えたりしないように、気をつけてあげて?」

「どうしてですか?」

「あの子のためよ」

春田の真意は掴めないものの、その真剣な眼差しに、達也は「分かりました」と答えるのだった。