しかし達也の場合、そんな計算からではなく、単に最短距離を歩くべく鋭角に曲がったに過ぎない。長身で体格が良いため、人にぶつかる事への恐怖心がない、というのもある。

その結果、今回のように人とぶつかる事は珍しくなく、相手が女子である事もよくある事だ。


だが、いつもと少し違う点があった。それは、達也に殆どダメージがなかったという事。

いくら体格のいい達也でも、人とぶつかればよろけたり、多少の痛みを感じるのが普通だが、今回はそういう感覚が全くなかった。

まるで、小さな子供がぶつかって来たみたいに……


実際、達也がぶつかった相手は、達也から3メートルほど前の床の上に、手を着いてうずくまっていた。達也とぶつかった衝撃で、彼女はそこまで飛んだらしい。

その側には、英語の参考書と英和辞典、ノート、ペンケースなどが散乱していた。