君に笑顔を ~地味子に恋したイケメンのお話~

いよいよ映画の本編が始まった。
達也がチラッと隣を見ると、瑞希は目を大きく見開き、スクリーンを食い入るように見ていた。

それがまるで幼い少女のようで、可愛いなあと達也は思った。

ひとまず安心して映画に集中を始めた達也だが、急に大きな効果音がしたり、暴力シーンがあると、瑞希が小さく「きゃっ」と言ったり、肩をピクッとさせるのが分かった。

「出るか?」

そんな瑞希の耳元に口を寄せて達也は聞いた。すると瑞希は達也を振り向き、

「どうして?」

と、驚いた顔で聞き返した。

「怖いんだろ? 無理しなくていいから」

「ううん、大丈夫。怖いけど、面白い…」

暗くて表情はよく分からないが、瑞希の声が興奮気味なので、たぶん無理はしてないだろうと達也は思った。

「そっか?」

達也は瑞希の膝の上に手を伸ばし、瑞希の少し汗ばんだ手を握ると、瑞希もギュッとその手を握り返すのだった。