キッチンへ行ったものの、瑞希にはオール電化の器具は見るのも初めてで、使い方が分からない。
ヤカンが見つからず、お湯を沸かす事も出来ない。

情けなくて泣きそうになっていると、「おはよう」と言いながら達也がキッチンへやって来た。

「おはようございます…」

「どうしたんだ?」

瑞希の泣きそうな表情に、達也はすぐに気が付いた。

「朝ご飯を作ろうと思ったんだけど、火の着け方も分からなくて…」

「ああ、火は使わないんだよ、このマンション」

「え? じゃあ、お湯はどうやって沸かすの?」

「これで沸かすんだよ」

達也は白くて小さな電気ケトルをひょいと持ち上げた。

瑞希が水差しかポットだと思っていた物だ。

「役立たずで、ごめんなさい…」

「気にすんなって。初めてじゃ知らなくて当たり前なんだからさ」