触れるだけのキスのつもりが、つい夢中になり、深くて長いキスになってしまった。

腕の中で瑞希がもがき出して、漸く達也は瑞希の口を解放した。

すると瑞希は、達也の裸の胸に額を着け、肩を揺らして荒い呼吸をした。

「大丈夫か?」

「…うん。でも…苦し…かった」

息が切れ、途切れ途切れに言う瑞希の頭を、達也はそっと優しく撫でた。

(そうか…、瑞希はキスの仕方を知らないんだな。もしかして、初めてだったとか?)

少しして息が落ち着くと、瑞希は顔を上げ、黒目がちの大きく澄んだ目で達也を見上げた。

「デコピンだと思ってたから、びっくりしちゃった」

「え? 何で、デコピン?」

「私が“はい”って言ったから…。今の、お仕置きだったんでしょ?」

(ああ、それで“痛くしないでね”か…。車の中でもそんな事があったな。それが既視感の理由かあ。それにしても…)