「え?」

「私に出させてください!」

珍しく必死な瑞希の頼みでは、断るわけには行かないなと達也は思った。

「わかったよ。でも今回だけな? 女子に奢ってもらうのって、格好悪いからさ…」

「はい、ありがとうございます」


ショッピングモールを出た所で、瑞希が達也の腕をクイッと引っ張った。

「ん?」

「ねえ、あそこはどうかしら?」

瑞希が指差したのは、ショッピングモールのすぐ脇にある全国チェーンのイタリア料理店だった。

価格が安く、ドリンクバーがあるのでいつも学生や家族連れで賑わう店だ。もちろん達也は何度も入った事がある。

「ああ、あそこなら無難かもな。味も悪くないし」

「そうなんですか? 私、一度入ってみたかったんです…」