瑞希が濡れた手をタオルで拭くのを待って、達也はそのブルゾンを瑞希の肩に掛けた。

そして瑞希はそれに腕を通したが、長すぎて袖を手繰らないと手が出ない。

「これ、俺には小さめなんだけど、おまえにはデカすぎるな。少しの間、これで我慢してくれるか?」

「はい。大丈夫です」

「じゃあ行こうか?」

「はい」


マンションを出ると、辺りは夕闇に包まれ、肌寒さを増していた。


「ちょっと寒いな。大丈夫か?」

「はい、大丈夫です」

「すぐ近くだからさ」

「はい」


達也は横を歩く瑞希に合わせてゆっくりと歩いたが、それでもほんの数分で大型のショッピングモールへ着いた。

そこは、夕方という事で、大勢の人でごった返している。


「あ、そうだ。はぐれた時のためにケー番を交換しとこうぜ?」

そう言って、達也はポケットから黒い携帯電話を取り出した。