君に笑顔を ~地味子に恋したイケメンのお話~

「お、おお……あ、やっぱりいい」

達也は、瑞希が差し出したピンクの紙袋を手で押し返した。

(そんなもの見たら、俺の理性がぶっ飛んじまうよ。コイツ、全然わかってねえなあ…)


「そ、そうですよね」

(私ったら、はずみとは言え何やってんだろう。恥ずかし…!)


「あの…コーヒーの味はどうかな?」

「あ、はい」

顔を赤らめた達也に見られながら、やはり顔を赤らめた瑞希は、両手でピンクのマグカップを持ち上げた。

マグカップからは、湯気と共に瑞希が好きなコーヒーの香が立ち上っている。

口を火傷しないよう、慎重に一口すすると、ほろ苦さと甘さが程よくバランスされていた。

「美味しいです」

「そう? 砂糖入れすぎてない?」

「いいえ、ちょうどいいです」

普段はもっと砂糖を入れ、コーヒーの苦さを感じないほど甘くしている瑞希だったが、このぐらいの甘さに抑えて、コーヒーの苦さを味わうのも悪くないなと思った。