「ほら、着ろ。」

俺は上に着てた学ランを隣に座った蓮祈に渡す。
ボタン全開だったから着て無いようなもんだったし。

「いらない。」
「お前な、全身びしょ濡れだと風邪引く。」

無理矢理掛けてやる。
抵抗はしないから素直に受け取ることにしたんだろう。

「アリガトウゴザイマス」

せめて礼を棒読みでいうのはやめて欲しい。

「どういたしまして…」


2人の間に流れる沈黙。
近いようで、一定の距離がある。

そんな関係が、俺たちにはちょうどいい。

「あ、そうだ。」

蓮祈が沈黙を破った。

「桜ヶ丘 悠っているでしょ?」

理事長の娘とかいうやつか。

「あぁ。」
「あの子の手下がいってたよ?」
「なんて?」
「氷風様に媚売ってないでさっさと消えろ。あなたは相応しくない。って」

なんだそれ。
思わず眉間に皺が寄る。

「おぉ、ほんとに寄った。」
「あ?」
「いや、この話きかせたらあんたの眉間に皺寄るかなーって思ってただけ。」

………こいつは仮にもイジメられてるときに何考えてんだ?

「うぜぇ…」

あいつらになんか、興味はねぇ。



そう、思ってた。
何も知らなかった。